わたしたちが考える、これからの「あるべき姿」。それは「脱炭素・循環型」の社会です。その実現のために策定した「Tokyo Steel EcoVision 2050」をご紹介します。「今、動く。」私たちの具体的なアプローチです。
日本の2050年カーボンニュートラルを実現するためには、鉄鋼業において、その現在の排出量の約13%を占める131百万トンを削減する必要があります。
また、増加を続けるわが国の鉄スクラップは、2050年には国内の鋼材需要の大部分を満たす数量に達していると期待されます。
膨大なCO2排出量の削減、貴重な資源である鉄スクラップの国内での資源循環という社会が直面する二つのテーマに向き合い、2050年の「あるべき姿」である「脱炭素社会」「循環型社会」を実現するため、電炉トップメーカーとして鉄鋼製品の新分野にチャレンジし続けてきた東京製鐵だからこそできる社会への貢献、そして、東京製鐵が先頭に立って取り組まなければならない課題として、わたしたちは、長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」を策定しています。
「Tokyo Steel EcoVision 2050」は、「脱炭素社会」「循環型社会」の実現を柱とし、脱炭素・循環型鋼材である電炉鋼材の供給を通じて日本のCO2排出量の大幅な削減、貴重な鉄スクラップの国内での更なる有効利用を通じて資源効率性向上をはかり、2050年の「あるべき姿」の実現に貢献してまいります。
わたしたちは、「脱炭素社会」「循環型社会」の実現に向けて、2030年・2050年それぞれに数値目標を策定し、その達成を目指していきます。
製品の製造段階におけるCO2排出原単位の低減、国内鉄スクラップの高度利用を通じて、2050年の「あるべき姿」である「脱炭素社会」「循環型社会」の実現に大きく貢献していきます。
Tokyo Steel EcoVision 2050
※2030年の削減目標の策定にあたっては、IEA(国際エネルギー機関)の「World Energy Outlook 2020」のSDSシナリオにおける電力のCO2排出係数を参照しています。
※WWFジャパン「脱炭素社会に向けた長期シナリオ」の100%自然エネルギーシナリオの一次エネルギー供給構成のうち自然エネルギーシェアが2050年100%の前提
※当社製品1トンあたりのCO2排出原単位は、自然エネルギーシェアの拡大と省エネルギー活動の推進により、2030年に0.2t-CO2/t、2050年に0t-CO2/tとなる前提
※生産高×(高炉のCO2排出原単位-自社のCO2排出原単位)により算出。高炉の排出原単位は日本鉄鋼連盟のBAT(Best Available Technology)最大導入シナリオを参照
脱炭素社会の実現に向けて
脱炭素社会の実現には、わが国全体のCO2排出量の約13%を排出する鉄鋼部門での取り組みが不可欠です。わたしたちは電炉鋼材=脱炭素・循環型鋼材の生産・販売の拡大を通じて、社会でのCO2排出量削減を進めていきます。
CO2削減と国内粗鋼生産シェア向上のイメージ
中長期排出削減目標
当社は、「Tokyo Steel EcoVision 2050」のもと、2030年、2050年に向けた排出削減目標を設定しています。Scope1,2におけるCO2排出原単位は、2013年度を基準年として、2022年度で既に35%の削減を達成しており、2030年度は総排出量ベースで2013年度と同等、原単位ベースで60%の削減を目標とし、2050年度にはカーボンニュートラルの達成を目指します。当社は、鉄スクラップの「アップサイクル」を通じて、自社の生産を2030年に600万トン、2050年に1,000万トンまで拡大し、高炉鋼材から電炉鋼材への置き換えを推進することにより、社会の「カーボンマイナス」実現に貢献してまいります。
排出削減目標
Scope1,2排出削減ロードマップ
CO2排出原単位削減目標・施策ミックス
当社は、製造段階におけるCO2排出原単位を、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、大きく削減していきます。当社では、大きく6つの施策をピックアップし、施策別の削減率を整理しました。現時点で大きな割合を占める電力起因のCO2排出については、社会の再生可能エネルギー等の普及により大きく脱炭素化が進む電力を活用する電炉法により、鉄スクラップの「アップサイクル」を拡大していくことで、CO2排出原単位の大幅削減に繋げていきます。また、まだまだ不安定な電源である再生可能エネルギーの受け皿として、電炉操業の柔軟性を生かしたデマンドレスポンス(DR)を実施し、再エネ使用の拡大と電力系統の安定化に貢献していきます。また、毎年1%以上の削減目標のもと、脱炭素投資の積極的実施、既存プロセス見直し、エネルギー効率の向上等を、カーボンニュートラル達成に向けた全社的な取り組みとして実施していきます。当社は、これらの施策を通じ、2050年度のカーボンニュートラル達成に向けて活動してまいります。
施策別削減率ターゲット
排出削減に向けた施策ごとの取り組み
小宮山宏(元東大総長)・山田興一(東大総長室顧問)著「新ビジョン2050」(日経BP社)では、目指すべき、環境と調和のとれた持続可能な社会を「プラチナ社会」と名づけ、その方策のうち、「脱炭素社会に向けた取り組み」の一つとして、「鉄鋼業の電炉化」が提言されています。
プラチナ社会
「鉄鋼業の電炉化」
■物質循環システムの確立 <2050年には、世界の鉄鋼生産量を大きく上回るスクラップが発生する。>
→あらゆる鉄鋼製品をスクラップから作ることで、エネルギー消費量を削減。
■ 新たな鉄鋼業界の姿へ ~CO2排出量80%削減の実現~
→年間2億トン(産業分野で最大)のCO2を排出する鉄鋼業のあるべき姿として、高炉鋼材から電気炉鋼材へのシフトを進め、電炉生産量を現在の2倍にあたる5000万トンにすることにより、日本の全排出量のおよそ13%にあたる1億6千万トンを削減。
長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」の実現に向けて各分野で以下の取り組みを行っていきます。
Tokyo Steel EcoVision 2050 |
テーマ |
●当社製品ライフサイクル全体におけるCO2排出量の削減(スコープ1、2、3) | CO2排出量原単位の削減 |
●当社製品の普及拡大と鉄スクラップ回収量の増加 ●社会全体のCO2排出量の削減 (排出削減貢献量) |
脱炭素・循環型鋼材のシェア拡大 |
グリーンパートナーシップの強化・拡大 | |
廃棄物の有効活用の推進(廃棄物の資源への転換) | |
●当社生産プロセスからの廃棄量の削減 | 廃棄物の再資源化 |
No. | アクションプラン | 自社内での 取り組み |
需要家との 取り組み |
供給会社と の取り組み |
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1 | ■省エネルギーの実施 省エネルギー投資の積極的実施や生産・調達・輸送プロセス見直し等によりCO2排出量原単位の毎年1%以上の削減を目指していきます。CO2排出量原単位を2013年度比で、2030年に▲60%、2050年に▲100%を目標に活動します。 |
○ | ○ | |
2 | ■再生可能エネルギーの導入 再生可能エネルギー等の非化石エネルギー起源の電力普及にあわせ、使用拡大を進めていきます。 |
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3 | ■技術開発・製品開発の推進 継続的な技術開発・製品開発による鉄スクラップの「アップサイクル」を通じて当社の脱炭素・循環型鋼材の魅力を高め、脱炭素・循環型鋼材の市場シェアを拡大していきます。 |
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4 | ■市場の創出 脱炭素・循環型社会の実現というビジョンを共有する顧客企業・行政・大学・研究機関等との協働を通じ、当社の脱炭素・循環型鋼材(※1)の採用拡大に向けた取り組みを進めます。国、地方自治体に対しては、公共投資に脱炭素・循環型鋼材である電炉鋼材を指定することを呼びかけていきます。 |
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5 | ■顧客との協働による鉄スクラップ回収率の向上 鉄スクラップの高度利用と継続的な技術開発(※2)を通じて、顧客企業等との水平リサイクル(※3)を拡大します。また、顧客企業等で当社製品使用時に発生する加工スクラップの回収率を向上し、当社の脱炭素・循環型鋼材を納入するクローズドループの循環型取引を拡大します。 |
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6 | ■鉄スクラップ事業者とのパートナーシップの強化 脱炭素・循環型社会の実現というビジョンを共有する国内鉄スクラップ事業者とのグリーンパートナーシップの強化により、鉄スクラップの回収量の増大を図っていきます。 |
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7 | ■廃棄物再生処理の推進 当社電気炉を活用し、自治体・企業から発生する廃棄物の再生処理(※4)を通じ、鉄資源等の回収と有効利用を進めていきます。 |
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8 | ■廃棄物のゼロエミッション達成 生産プロセスの見直し等により国内4工場での廃棄物のゼロエミッション達成に取り組んでいきます。 |
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