スマートファクトリー推進プロジェクト
当社は、安全・環境・品質・カーボンニュートラルに続く5本目の柱として、スマートファクトリー推進プロジェクトを展開しています。長期環境ビジョン「Tokyo Steel EcoVision 2050」の実現に向けた全社的な取り組みを通じ、中期的な目標である2030年の年間生産量600万トンを現在の人員数で成し遂げるための体制構築を目指しています。スマートファクトリーとは、総務省が発したIndustry4.0(2016年)を包含する「超スマート社会」Society5.0(2017年)と方向を一にするものです。前身の「業務改善プロジェクト」を2017年に発足させ、2019年には「基幹システム更新プロジェクト」を始動、2021年よりそれらを包括する「全社スマートファクトリー推進委員会」を立ち上げました。受発注業務、生産業務、および、老朽化した生産設備のスマート化と同時に、経済産業省がDXレポート(2018年)で言及した「2025年の崖」への対応を進めています。IoTやAI等の積極的な活用によりQCDFの更なる向上をはかることで、企業業績の拡大と組織の変革に努めています。
同業他社の後塵を拝していましたが、2021年8月に当社流のDXを詰めこんだ受注システムの「とうてつ君」をリリースしました。社内開発担当者はわずか3名、プログラムを外注して1年で完成させました。DXレポートで懸念されている、ベンダーへの丸投げによるブラックボックス化を回避、社内プログラマーが保守・変更できるシステムとしました。また、システムが肥大化したホストコンピュータから機能別に切り出す取り組みの一つにもなりました。さらに、ミルシートの電子化も同時に採用して、全品種とも「とうてつ君」からダウンロードできる仕組みとした点は、一気に業界のトップランナーに躍り出たと評価しています。お客様への迅速、正確なミルシート提供は、当社の省力化・省資源化とお客様への品質保証の厳格化によるサービス向上の両立を果たしました。
H形鋼
ホットコイル
2021年11月に、圧延ロールや工場で使う資機材から事務用の文房具まで、ほぼすべての調達品をオンラインで管理するシステムを開発しました。従来は注文書や納品書で大量の紙が使われており、書類の保存や購入履歴の確認作業が大きな負担となっていました。全社で月数百件の発注がオンライン化され、書類の大幅な削減と保管管理の省力化・省スペース化を実現しました。省資源と「やりがいのある仕事」へと時間をシフトさせることが肝要であると考えています。
入力画面例
老朽化する設備を多く保有する鉄鋼業界では生産設備のDXが大きな課題とされていますが、1979年操業開始の岡山工場棒鋼工場での主幹盤更新に伴う当社のDX推進事例を紹介します。左側2枚の写真の通り圧延機や表示器の一部は操業開始当時のままですが、右側の上段は圧延機の操作用品、ベンダーによる主幹盤更新で汎用基板を用いたオープンシステムに変貌を遂げ、下段は現場社員がその情報をシーケンサ更新によって取込んでGOTという汎用機器を用いてトラッキングや生産管理するシステムを開発しました。レガシーシステムならぬ、レガシー工場において、最新工場にひけをとらない情報管理ができるようになりました。
第一歩目の重大な決断はCOBOL言語を残すか否か、という事でした。良い点として、①メインフレームの保守が当面確約されている ②安心・安定 ③習得しやすく、他者が作ったプログラムも理解しやすい、などがあげられ、悪い点としては、①プログラマーの減少 ②システムの肥大化、でした。当社にとって良い点の方が圧倒的に優り、直ちにJavaにマイグレーションしてオープンフレームに全面更新をするリスクを負う必要はないと判断をしました。当社の進めている基幹システム更新は、メインフレームとともに安定・安心なCOBOL言語のシステムを残し、本来の会計のみの機能へとシュリンクさせています。すでにホスト機能は2017年比で42%減にできており、同時に社員のCOBOLプログラマーを確保しています。COBOLプログラムをホストに残すという事は、改造やトラブル対応について、100%社内でクローズできることを意味します。これからの5ヶ年計画で、①会計以外のシステムは新規開発、パッケージソフトのカスタマイズ、機能別にメインフレームから切り離してサブサーバーやクラウドに置く、②重要なシステム・データは当面オンプレミスとする、③クラウドサービスについては、外部からアクセスのある部分についてセキュリティ対策やパッケージサービスとして活用する、④各工場のプラント計算機 L2も統合データーベースに接続、ビックデータに生産ラインの操業データーをも追加して、品質保証や経営戦略に活用する、こととしました。当社はクラウドも活用しながら分散コンピューティングへと向かい、その後シュリンクしてミニマイズしたホスト部分をオープンサーバー化することで、基幹システム更新をソフトランディングさせます。